営業の思い込み

営業というと、どうしても「セールス=売り込み」と連想される方が多いように思いますし、営業を苦手としたり自分にも不向きと思っている方もこういう考え方の傾向があるようです。

ひと昔までは、訪問に行けば売れた時代があったようなので、こういった印象が根付いてしまったのかもしれません。

この売り込みを狙って営業活動を行うことは、あまり効率が良いとは思えません。その場でガツガツ話をしても、飛躍的に効果が上がるとも思えません。営業活動は、「人が集まるような仕組みを作る!」というスタンスで取り組むべきだと感じました。

飲食店の営業回りをこれから始める方に知っておいて欲しいことは、段階を踏まないと来店が増えてこないということです。

  1. お店や商品の存在を知ってもらう
  2. 興味をもってもらう
  3. 来店の機会が訪れるまで、忘れられないようにアプローチを継続する
  4. 来店していただく
  5. 次につなげる(口コミ、リピート)

飲食店関係の方が営業やビラ配りに来ることがたまにありますが、二回目の訪問に来る方はあまり見かけません。

一回だけの営業で、いきなり④の段階にたどり着くのはなかなかのラッキーだと思います。しかし、一回の訪問で多少なりとも興味をもってもらえることに間違いはありません。

法人営業を通してできること

飲食店経営において、法人営業として行えることは主に以下のようなことと考えています。

長期的な集客:地域とのコミュニケーション

法人営業の実体験として、「お客を店に集める」という集客のスタンスは非常に厳しい!と感じています。

どういうことかと言うと、新規客を集め続けるにはより多くの訪問をこなすしかないので、いつまでたっても集客に苦労が伴います。それよりも、ある程度訪問先を絞り込んで「地域との輪を広げる」という様なスタンスが精神的に楽かと思います。

私の場合、地域とのコミュニケーションとして、以下のような取り組みを行いました。

ニーズ、要望などの情報収集

初めての訪問で、あれこれと質問するのはどうかと思いますが、何度が顔を出すと(一度来店して頂いた後であれば特に)少しずつ会話ができる訪問先が増えてきます。私の場合、無理に訪問数を増やしたり、立ち寄りにくい訪問先にいくよりも、楽しみながら良い顧客を増やしていくような感覚で営業活動を行っていましたので、ストレスなく実践できました。

  • いつもどんなお店を使っているのか?
  • どんな事に困っているのか?
  • (来店して頂いたお客さんであれば)ご利用の感想は?

ここから、お店の改善につながる情報が入手できればラッキー、来店してもらえれば更にラッキーという感覚です。

お店からの提案

一般的に訪問の際にはチラシやクーポンを配りますが、これも一種の「提案」になるのかと思います。やはりお店を知っている人の方が集客効果は高いようです。一度来店頂いた顧客に対しては「提案」を辞めてしまう方もいるようですが、非常にもったいないように感じます。

お礼・お詫び

これは特に大切だと感じています。

一度来店して頂いた顧客に(宴会を入れていただいた顧客に限定しても良いですが)お礼訪問した事はあるでしょうか。

ホテルばどの法人営業では基本的には宴会の利用をしていただいたお客さんに対してお礼の訪問を行います。訪問しないセールスマンも中にはいるでしょうが。

全く面識のない方の予約に対してお礼に行くのはどうかと思いますが、営業先の面識のある顧客であればそれも可能です。もしもお客様が何か不満を抱えていれば、そこで解消できるチャンスもあります。解消できればリピーターになってくれる可能性が高まります。

心理学上「認知的不協和」という考え方があり、経営・マーケティングに応用される事もあります。興味のある方は調べてみるのも面白いかもしれません。

飲食店に営業は必要か

営業=「集客」と連想される方が多いと思いますが、集客は営業の目的のひとつではありますが、集客以外にも様々なメリットがあります。複雑に考え出すときりがありませんが、ここではざっくりと以下の二つを主な目的として紹介します。

  1. 長期集客 : 宣伝にありがちな短期間だけの集客ではなく、持続的な効果がある集客(リピーター作り)。
  2. 情報収集 : 繁盛店を作るために外部の情報を積極的に取り入れる。

順に説明させてもらいます。

1.長期集客

まず一つは、当然のことながら「集客」です。ただし長期的な集客を意識した方がよいと思います。一時的(一回きり)な来店を狙うなら、チラシや情報誌を使えば良いでしょう。しかし、仮にリピーターがつかず、宣伝を繰り返せばいつまでたっても集客にお金がかかります。

集客にコストがかかれば、せっかく来店が増えて売り上げが増えても、費用の分だけ利益は縮小します。利益がでなければ集客の価値は低くなります。 仮に、集客の価値を以下のように考えるとします

集客の価値 = 集客効果(増収) / 集客費用(コスト)

集客の価値を考えれるとすれば、極力低コストで大きな効果が発揮するに越したことはありません。その面で、すき間の時間をうまく使った営業活動は、長期的にみて大きな効果と、少しの費用(極端に言えば労力のみ)で実践できるため、飲食店の集客には必要不可欠だと感じています。

商売をするうえで、いかに売上げを大きくし、いかに利益を残すか(コスト小さくするか)という財務上の基本がありますが、集客についても同様だと思います。

2.情報収集

お店の改善検討するにしても、客観的な情報を正しく把握していなければ見当違いな部分を改めてしまう危険がありますし、場合によっては改悪にも成り得ます。

情報を収集を目的とするなら、営業活動(外回り)ほど低コストで顧客の声をダイレクトに聞ける機会はあまりないと思います。

アンケートや接客の情報収集では、既に来店しているお客様からの情報だけしか集まりませんが、営業先では来店していない潜在客からの情報が得られます。来店されないお客様が何をネックに来店しないのか、どういう問題点があるのかを知る良いチャンスです。

「自分のお店はオリジナリティーがあるから、お客さんの意見に合わせる必要はない」とおっしゃる方もいますが、意見に対してコンセプトもなく右往左往することと、顧客の意見を参考にしオリジナリティーを洗練していくことは別物と考えています。

オリジナリティー、店の強みやコンセプト、店主の思いなどの「背骨」を引き立たせるために顧客の意見を参考にして、足かせをとっぱらっていって欲しいと思います。

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